「売り手市場」「人手不足」など、採用を取り巻く環境は厳しい状況が続いています。せっかく採用してもすぐに離職してしまう若者も少なくなく、コストを回収するためにも定着率を高める新人研修が大切です。今回のアンケートでは実際に行われている新人研修の特徴を見ていきながら、よりよい研修内容にするためのポイントを考えていきましょう。
【質問】新人研修でしていることは何ですか?
【回答結果】
1位 マナー系 | :39% |
2位 技術(実務)系 | :26% |
3位 OJT系 | :19% |
4位 マインド系 | :12% |
5位 その他 | :4% |
1位:マナー系
来客や電話の応対などビジネスマナーの基礎を新人の研修では学んでいます。
(北海道/33歳)
仕事を覚えることよりも、まずは社会人としての最低限のマナーを覚えておかないと後々苦労することになると思うから。
(30代/女性/埼玉県)
接客業のため、基本的なマナーが重要になるから。
(神奈川県/32歳)
新卒採用の社員に社会で必要な基本的なマナーや言葉づかいをきちんと身につけて欲しいという姿勢がよく現れています。来客時の接遇や電話応対といった会社で必ず求められるマナーの基礎を大切にしていることがよくわかるといえるでしょう。右も左もわからない新人を一から並みの社会人に変身させることは、業務スキルよりも最優先の課題ということです。特に接客業のようにお客様と現場でダイレクトに接する業種であれば、基本的なマナーはなおさら必須条件になるようですね。
2位:技能(実務系)
仕事を行うにおいて必要最低限のことは覚えておいてもらわないと仕事にならないので、最初はそういう研修を行っています。あとは徐々に仕事をしながら覚えて行ってもらう感じです。
(群馬県/43歳)
職場での物事の流れや役割を知るという目的で、直接そこで仕事をする部署でなくても一通り各部署を周ってそこで仕事をしている人と行動を共にするという研修が就職してまず一番にあります。
(鳥取県/43歳)
業務に必要な実務スキルの研修はその会社での生活のベースとなるため、最初の段階でしっかり教え込んでおきたいという意図が感じられます。また、配属された職場だけにとどまらず、社内の他部署の担当者にレクチャーを受けたり、短期で部署を回って会社全体の仕事を理解させたりすることで、広い視野で目指すべき実務スキルをイメージさせる工夫も見受けられました。さまざまな上司や先輩社員と入社間もない段階で交流させることで、目指すべき業務スキルのレベルをイメージさせる狙いもあると考えられます。
3位:OJT系
新人研修は6ヵ月行いますが、最初の2ヵ月は、マナー研修、マインド研修と海外研修があり、3ヵ月目からOJTが始まります。
(東京都/55歳])
OJTなどの実用的な研修に加えてマナーや接遇についても実施しています。
(静岡県/53歳)
大学卒業後に就職する人がほとんどだが、仕事の実務は経験してみないとわからない部分が多いので、仕事を進めながら研修しないと自立した仕事ができません。
(熊本県/62歳)
現場での即戦力を早く養成したい中小企業のように、早期にOJTを開始してマナー系もセットで行うことで、「スピーディーに会社へなじませたい」という人事側の傾向が強まっていると感じます。OJT次第で、新人が自社でうまく仕事を続けられるかに大きく影響するため、座学とほぼ並行して効率よく新人研修を実施したい思惑もあるようです。また、学歴があっても実際の仕事内容は「実務を通してでないと割り切っている」という点も注目。新人研修のなかでも実際の業務との橋渡し的な段階となるOJTに企業もさまざまなアプローチで新人教育をしている傾向です。
まとめ
新人研修の内容は業種や職種、企業の規模などによって違いはあるものの、目指すべき方向性は共通していることがわかりました。なかでもマナー系の研修は会社の顔を代表する社員を育成という重要度が高いため、社風に合う人材に育て上げる大事なプロセスだといえます。アンケートの声を集めてみると、学生気分のまま入社した新人を基本マナーをおさえた社会人へとたたき直すため、企業がマナー系研修を重視している実態が浮かび上がってきました。
企業側も、「新人社員をどこに出しても恥ずかしくないレベルのビジネスパーソンに仕上げて、早く仕事に慣れていって欲しい」という意図があるのでしょう。また、技能系の研修では、最低限業務に必要な知識を一通り身につけさせた後は、社内全体の業務の流れを理解させるため、ほかの部署と連携して研修を行うなど、近視眼的になりがちな新人社員の視野を広げる目的も感じられます。実務スキルの研修を通して、社風を実感してもらったり、職場の人間関係づくりのきっかけにしてもらったりといった効果も狙っているようです。
さらに、実際の業務スキルを身につけるOJTを早期に導入して新人社員といえども即戦力が求められる傾向が強まっているのが非常に印象的でした。今回、さまざまな角度からリアルな企業担当者の声を取り上げてみましたが、売り手市場とはいいながら新人社員と採用側との溝を感じるアンケート回答でした。新人社員をうまく会社に定着させ、職場にいち早く貢献させるため、改めて新人研修の重要性を再認識する結果といえるでしょう。